脳のクリーニングタイムは、寝ている間。
睡眠中に、脳からアミロイドβを排出することが判明した!
食事で認知症は予防できるか?
アメリカのアルツハイマー病予防、マインド食(MIND Diet)。
日本人の場合、特に「減塩」に気をつけたい。
血管を丈夫にする食事が、予防になる。
解説:鳥取大学教授 日本認知症予防学会 理事長 浦上克哉。
国立循環器病研究センター 脳神経内科 齋藤聡。
2017年5月17日放送の「ガッテン」より、「これが世界最先端! 夢の“認知症”予防SP」からのメモ書き。
その後編です。

□ 睡眠との関係

前半では、アルツハイマー病の原因が、アミロイドβの排出と関係していることが分かりました。
では、排出を維持するには、どうすればいいのでしょう?
次に向かったのは、オランダです。
ラドバウド大学 のジャーゲン・クラッセン 准教授が、アミロイドβを排出する方法を明らかにしたらしい。
クラッセンさんが行ったのは、こんな実験です。
40歳から60歳の健康な男性26人を、2つのグループに分けました。
1つのグループは、夜、普通に寝てもらいます。
でも、もう1つのグループには、徹夜をしてもらいました。
そして翌朝、アミロイドβの量を測った。
すると、徹夜した人は、アミロイドβが、寝る前よりも増えてしまっていたんです。
普通に寝た人は、アミロイドβが、寝る前よりも減っていました。
つまり、たった一晩の睡眠だけで、アミロイドβの排出に、影響が出たのだ。
アメリカはセントルイス。
こちらには、ただ寝るだけではなく、睡眠の質も大事だと証明した人が。
ワシントン大学 医学部の デイビッド・ホルツマン 神経学教授。
ホルツマンさんは、健康な145人の睡眠を調査しました。
センサーで身体の動きを測定し、寝返りの回数などから、熟睡の度合いを測定。
寝ている間の動きが少なければ、熟睡できている質の良い睡眠。
頻繁に動けば、熟睡できていないと考えられます。
その結果、熟睡の度合いが高い人ほど、アミロイドβの蓄積が抑えられるということが、分かりました。
ホルツマンさんは言います。
「私たちがアミロイドβを排出できる確実な方法の1つが、睡眠です」
「一生を通して、質のいい睡眠を取ることで、認知症のリスクを減らしたり、発症を遅らせたりできるのではないかと、考えています」
ということで、大事なのは「睡眠」だったんですね。
(ただし、どの程度の睡眠不足がアルツハイマー病の発症に影響を与えるかは、分かっていません)
脳のクリーニングタイムは、寝ている間。
睡眠中に、脳からアミロイドβを排出するということが分かってきました。
オレゴン健康科学大学 医学部の ジェフリー・アイリフ准教授。
ある研究で、一躍、世界から注目されるようになりました。
というのも、特殊な顕微鏡で、ネズミの脳を観察し続けたのです。

赤い管は、脳内の血管です。
その周りを、緑色に光る液体が流れていきます。
実は、これこそが、アミロイドβが排出される瞬間なのだ。
観察の結果、こんなことが分かりました。
寝ている時の方が、起きている時より、はるかに激しく流れ出ている。
アイリフさんは言いました。
「睡眠中、脳は、細胞の間に隙間を作っていたんです」
「その脳にできた道を通って、アミロイドβなどの物質を流しやすくしていたんです」
「これまで誰も見たことのないものが、目の前に現れたんだ」
「もう、大興奮さ!」
いや~、睡眠って、いろんなことに関係してるんですね。
おろそかにできません。
□ 浦上克哉先生の解説
ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
鳥取大学教授で、日本認知症予防学会 理事長の 浦上克哉 先生です。
これまでは、アミロイドβの「蓄積」にばかり注目していたのだそう。
それが今回、「排出」に着目。
新しい視点で、取り組めるようになりました。
(これまで) → 溜まるのを防げないか?
(これから) → 排出をよくできないか?
アルツハイマー病の予防には、「脳のゴミを排出する」ことが大事になる。
そして、これに関係するのが、「睡眠」だと。
これを浦上先生は、ゴミの収集車に例えて、説明してくれました。
昼間は、車がいっぱい走っています。
ですから、ゴミ収集車は、なかなか効率よく掃除(ゴミを集めることが)できません。
でも、夜になると車の台数が減るので、ゴミの収集車が非常にスムーズに動けると。
・昼間は効率的に排出できない。
・夜間の方が排出は活発。
寝ている間、脳は他のことに使われないので、排出が効率よく行えるようです。
だから、ある程度以上の睡眠時間は、確保した方がよいと。
おススメの睡眠は、以下の通り。
・6~8時間の睡眠。
・30分以内の昼寝。
65歳以上の男女、3000名以上を対象に、3年間、経過を追跡した、マドリード大学病院の研究があります。
それによると、6~8時間の睡眠では、認知症の発症リスクが低いことが分かった。
また、30分以内の昼寝をされる方は、それ以外の方に比べ、発症リスクが「1/5」に軽減したという報告もあります。
(こちらは、国立精神・神経医療研究センターの研究)
これらはまだ、断面調査の段階です。
良い睡眠がアミロイドβの蓄積を抑えて アルツハイマー病を防げるかは、今後の研究とのこと。
アルツハイマー病の予防には、もう一面があります。
それが、「脳神経を活発化させる」こと。
具体的には、こうなる。
・有酸素運動
・コミュニケーション
・知的活動
有酸素運動をすると、弱った神経細胞を活性化するホルモンが分泌されるのだとか。
また、アミロイドβを分解する酵素も、増えるらしい。
コミュニケーションとは、いろんな人と接して、おしゃべりするということ。
特定の人だけだと、受け答えがだいたい分かってしまいます。
それだとあまり、脳を使わないのだそう。
いろんな人とおしゃべりする方が、脳神経が活発化するのだ。
(ご年配の方だと、お孫さんなど、小さい子と会話するのがよい)
知的活動ですが、頭を使いながら指先を動かすと、脳神経が活性化するそうです。
縫い物や編み物、囲碁や将棋も、よいのだとか。

では、すでにアルツハイマー病になっている人は、どうしたらよいのでしょう?
そういった人でも、よい睡眠はアミロイドβの排出につながります。
脳神経を活発化させることも、効果的。
ただし、活動する内容をしっかり検討することが必要になる。
難しいことを無理やりやって、それが大きなストレスになると、逆効果になります。
本人が楽しく、負担にならずにやれるように、してください。
(かかりつけ医と相談の上、行ってくださいね)
□ 食事で認知症が予防できるか?

もし、食事でアルツハイマー病が予防できたら、うれしいですよね。
実はアメリカで、そんな食事法が開発されたらしい。
その名も、「マインド食(MIND Diet)」
生まれたのは、アメリカはシカゴ。
ラッシュ大学医療センターだ。
開発したのは、栄養疫学教授の マーサ・クレア・モリスさん。
アメリカ人の食生活と、アルツハイマー病との関係を、長年調べてきました。
モリスさんは、シカゴに住む およそ1000人の高齢者の食生活を調査。
彼らが食べた食品を144品目に分類し、平均5年にわたって、認知機能との関係を調べたんです。
すると、こんなことが分かった。
なんと、食べた食材の種類によって、アルツハイマー病の発症に、劇的な差があったんです。
<発症を抑える可能性がある食材>
・野菜
・ブルーベリー
・ナッツ
・魚など
<食べ過ぎに注意した方がよい食材>
・お菓子
・バター
・ファストフードなど
これをしっかり実行した人は、そうでなかった人に比べ、アルツハイマー病の発症が 53%も少なかったのだとか。
モリスさんは言いました。
「今、脳と食事の関係で、最も信頼できる研究が、このマインド食なんです」
そして、日本にも、この食事法を取り入れようという研究が、始まっているのだ。
国立循環器病研究センター。
こちらの病院では、アメリカで生まれたマインド食をもとに、日本人向けの新たな食事法を開発しようとしています。
この研究は、まだ始まったばかり。
でも、日本人に向けては、とっても大切なことがあると、分かってきたんです。
スタジオに登場してくれたのは、国立循環器病研究センター 脳神経内科の 齋藤聡 先生。
マインド食のメッセージとして、一番大切なことはこれ。
「バランスの良い食事が、認知症予防につながる」ということ。
なので、緑黄色野菜を食べましょうとか、そういうのは、日本人にも当てはまりそうです。
日本人が気をつけたいのは、「減塩」。
日本人はアメリカ人に比べ、塩分摂取量が過多で、高血圧の人が多いんです。
高血圧は血管によくないし、認知症の進行を促進するというデータも出ている。
なので、日本人の場合、アルツハイマー病の予防には、バランスのいい食事に加え、減塩が大切になるのだ。
また、「脳の血管を丈夫にする食事」が大切とも言える。
脳というのは、人間の体重の2%ぐらいしかない臓器なんですが、心臓が送り出し血流の20%を消費すると言われてるんです。
なので、脳の機能を良くするというのには、血管の健康を維持することが、最も近道になると。
アミロイドβの排出機構は、かなり多くの部分、血管が関係していると言われています。
つまり、脳の血管をしなやかに維持することが、アミロイドβの排出のカギになるというわけ。
食事は、血管の健康を維持するということに、かなり密接に関係してくるので、「脳のゴミを排出する」ということにも、かなり影響を与えるのではないかと。
さらに加えて、脳の神経細胞を健康に保つことにも、寄与すると考えられます。
ちなみに、アメリカ版のアルツハイマー病 予防食は、このような感じ。
<アメリカ版マインド食>
接触的に摂りたいもの。
・緑黄色野菜(週6日以上)
・その他の野菜(1日1回以上)
・ナッツ類(週5回以上)
・ベリー類(週2回以上)
・豆類(週3回以上)
・全粒穀物(1日に3回以上)
・魚(週に1回以上)
・鶏肉(週2回以上)
・オリーブオイル(優先して使う)
・ワイン(1日グラス1杯ほど)
控えたいもの。
・赤身の肉(週4回以下)
・バター(1日1回 大さじ1杯まで)
・チーズ(週1回以下)
・お菓子(週5回以下)
・ファストフード(週1回以下)
(あくまでアメリカ版です)
□ 尼崎市の取り組み

最後にガッテンが向かったのは、兵庫県尼崎市。
熱狂的な阪神ファンが多いこの地域ですが、意外な認知症対策を始めたというウワサが…。
尼崎市役所の一角には、「もの忘れチェック」という文字が。
保険師の方が、いくつか質問しています。
「今年は、何年ですか?」
「100から7を引き算することを、続けてください」
でも、受けている人を見ると、お若い。
43歳だったり、37歳だったり。
これは、若いうちから認知症予防について考えてほしいという、市の作戦なのだとか。
尼崎市ヘルスアップ戦略担当の 野口緑 部長。
「今の自分の認知機能の状態を知って、そこからさらに落としていかないように、一緒に考えるきっかけになるように、やっています」


次回は、これ。
介護要らず、元気でいてほしい。
そこで登場したのは、長寿戦隊プロテインZ!!
「筋肉! 血管! 免疫! あの栄養素で体ごと強くなるSP」。
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