健康長寿のカギは、「慢性炎症」だった。
健康診断(血液検査)の「CRP」という項目で分かる。
基準範囲内でも、高めなら要注意。
影響するのは、肥満・内臓脂肪。
ダイエットすれば、数値は下がる。
大豆やキノコ類に含まれる「ポリアミン」にも、改善の可能性が。
解説:九州大学 東京医科歯科大学 小川佳宏 教授。
2017年5月10日放送の「ガッテン」より、「めざせ健康長寿 大注目の検査はこれだ!」からのメモ書きです。

□ 長寿と慢性炎症

今週のテーマは、ズバリ、「健康長寿」。
実は、長生きの秘訣が、最新研究によって明らかになってきたんです。
アメリカの研究者は言った。
「将来、平均寿命は 100歳を越え、死の直前まで、健康に生きられるようになります」
さらに、朗報!
健康長寿のカギは、健康診断や人間ドックで行われる「血液検査」で簡単にチェックできるのだという。
その検査項目とは?
と、その前に、スーパーおじいちゃんの登場です。
ガッテンボーイの宮森右京くんが向かったのは、福岡県筑紫郡。
軽やかに走ってきたのは、阿南重継さんだ。
実はこの方、御年92歳。
趣味がジョギングだというのだから、驚きです。
病気もほとんど、したことがないのだそう。
(あるとすれば、恋の病ぐらい)
もっと驚きなのは、ギネス世界記録を 2つも獲得していること。
1つは、161歳のペアでフルマラソン完走(ご夫婦で 83歳と78歳のペア)。
もう1つは、家族三世代でマラソンを完走した合計最高齢(本人90歳、娘さん54歳、お孫さん28歳)。
いや~、すごいですね。
さて、本題です。
アメリカはミネソタ州にある、高級ホテルと見間違えるような病院。
名前は、「メイヨークリニック(MAYO CLINIC)」という。
アメリカでも最先端の研究施設を併せ持つ病院だという。
そこで健康寿命をのばす研究をしているのが、ヴァン・デューセン博士だ。
博士の研究は、世界が注目する科学雑誌「Science」で、2016年の「ブレイクスルー(ブレークスルー)」を受賞。
画期的な研究の一つに選ばれたんです。
人に換算すると80歳のマウス。
普通に老化したマウスは、背中が曲がっていて、元気がありません。
でも、左側のマウスは、元気いっぱいだ。

デューセン博士は言いました。
「左のマウスは、慢性炎症を止めることで、(人に換算すると)100歳を越えても、元気で長生きしたんです」
「つまり、慢性炎症を止めれば、健康長寿を得ることができるんですよ」
キーワードが出てきましたね。
「慢性炎症」
博士は、こういう言い方もしました。
「慢性炎症を止めれば、腎臓や心臓の機能もよくなるし、がんのリスクも減るでしょう」
「もちろん、人は年をとるけど、より健康に年をとっていくことでしょう」
と、志の輔さんが、こんな言葉を使いましたよ。
「ピンピンコロリ」
ゲストの山根千佳さんは、ポカ~ンとして、よく分からないみたい。
病気に苦しむことなく、亡くなる直前まで、ピンピンしていること。
元気なまま、天寿を全うする。
ピンピンコロリ、略して、PPK。
それは理想だけど、どうすればいいの?
ここでスタジオに運ばれてきたのは、「健康診断表」です。
実は、その中に、慢性炎症を教えてくれる項目があるのだ。
それが、「CRP」。

でも、「CRP」って、何なの?
都内の救急医療センター「東京臨海病院」でも、この言葉が出てきたぞ。
搬送されてきた人の血液を採取。
CRPは、患者さんの状態を正確に把握するために、とても重要なのだとか。
この時は、CRPの数値などから、肺炎があることを見つけ出しました。
CRPは 20年ぐらい前から、救急の現場で、炎症の指標として使われているのだという。
高い値が出ていれば、重症の感染症になっている可能性が高いと ざっくり判断できる。
非常によい指標とのこと。
「CRP=C-Reactive Protein」
体内で炎症が起きると肝臓から出る、たんぱく質のこと。
炎症がひどければひどいほど、数値が高くなります。
<炎症と慢性炎症の違い>
身体のどこかに、ケガや病気があって、そのために起きるのが、炎症。
具体的には、赤くなる、腫れる、熱を持つ、痛みなどが、それ。
これに反し、慢性炎症は、本人が気づかないようなものなんです。
弱い炎症で、赤くなるわけでも、腫れるわけでもない。
痛みも熱もないのに、起こり続けます。
そんな、弱い弱い炎症のことなのだ。
「慢性炎症とは、長く続く自覚症状がない弱い炎症のこと」
それが続いているうちに、周りの臓器や血管を痛めつけ、いずれ、動脈硬化や がんの原因になります。
CRP(mg/dl)は、0.3以下が、基準範囲。
0.3~1.0が、要注意。
1.0以上だと、異常になる。

今回紹介するのは、基準範囲の下になります。
キーワードは、「高感度CRP」。
今までは「0.3以下」とアバウトでしたが、細かく分かるようになったんです。
「高感度CRPは、慢性炎症のような弱い炎症も検出できる」んです。
さて、高感度CRPで分かる慢性炎症の原因とは、何なのでしょうか?
□ CRPが高くなる原因

身体の中で起きる小さな炎症でも測定できるのが、「高感度CRP」です。
小数第2位まで、検出できる。
(健康診断で、CRPの項目が 小数第2位まで記載されていたら、高感度CRPによる検査)
ガッテン調べでは、人間ドックのほとんどで実施されているそうです。
また、健康診断をしている施設の約5割で、血液検査の中に 高感度CRPが組み込まれていたそう(東京都府中市での調査)。
(*高感度CRPだけの検査は、通常行っていません)
今回、高感度CRP大調査が実施されました。
集まってもらったのは、20代から70代の男女、総勢60人。
まずは、身長や体重、体脂肪などを測定します。
炎症の原因となる風邪や捻挫、骨折なども、詳しくチェックした上で、血液を採取する。
すぐに高感度CRPで、測定。
さあ、どうなるか?
20代の人たちは、少ないですね。
「0.01」mg/dlとか、「0.05」とか。
中には、「0.00」という人もいた。
40代になると、ちょっと高めの人が出てきたぞ。
50代では、基準範囲となる「0.3」を超える人が、2人。
「1.02」と「0.35」。
そして、なんと、この調査で、慢性炎症を引き起こしやすい特徴が、分かったんです。
それは何?
60人の分布図は、こんな感じ。

問題は、この中で、CRP値が高めだった人の原因です。
それは、「肥満」。
肥満とは、男性で体脂肪が 25%以上。
女性で体脂肪が 30%以上。
さて、肥満と慢性炎症が、どう関係するんでしょうね。
脂肪細胞を研究している専門家に、教えていただきましょう。
大阪大学 生命機能研究科の 石井優 教授。
「肥満になってくると、脂肪細胞がどんどん大きくなっていって、非常に弱いんですけど、ジワジワ、ジワジワと炎症が続き、慢性炎症が起こってくるんですね」
脂肪細胞が脂肪をため込んで膨れ上がると、身体にとって要らないと判断した免疫細胞が集まって、攻撃し、炎症を起こすのだ。
□ 小川佳宏先生の解説
ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
九州大学と東京医科歯科大学で教授をされている、小川佳宏 先生です。
高感度CRPによって、基準範囲内でも、細かい数値が分かるようになりました。
それによると、肥満の人は(基準範囲内でも)CRP値が高め。
目に見えた症状はなくても、炎症が少し長引いて、慢性炎症の状態になっていると推測できます。
皮下脂肪、皮膚の上からつまめるような脂肪は、あまり炎症が起きないのだそう。
問題になるのは、お腹回り。内臓脂肪と呼ばれるものです。
内臓脂肪は、非常に炎症を起こしやすい。
「皮下脂肪よりも、内臓脂肪の方が、慢性炎症を起こしやすい」
お腹回りがプクッと出てるようなタイプは、要注意!
他にも、歯周病菌が血管に入ることで、炎症を引き起こすこともある。
ガッテンでは、さらに実験を実施。
CRP値が高め(基準範囲内)の3人に協力していただき、ダイエットに挑戦してもらった。
やせたら、値は下がるのでしょうか?
ダイエット期間は、3週間。
Aさんが始めたのは、毎日30分のウォーキング。
有酸素運動で、脂肪を燃やします。
Bさんは、スポーツジム通いを再開。
有酸素運動で、汗をかきますよ。
Cさんも、毎日のウォーキングを始めた。
食事は3食しっかり摂り、間食を避け、野菜をたくさん食べることを心がけました。
3週間後、結果はどうなった?
体脂肪は、全員ダウン。
Aさん:31.1 → 29.6%。
Bさん:30.3 → 28.1%。
Cさん:37.2 → 35.9%。
でも、肝心なのは、CRP値です。
さあ、どうなったか?
CRP値(検査当時 → 2週間後 → 3週間後)
Aさん:0.24 → 0.18 → 2.89。
Bさん:0.25 → 0.04 → 0.03。
Cさん:0.14 → 0.04 → 0.05。
Aさんは最後に、跳ね上がっています。
これは、検査当日に 風邪をひいたため。
Bさんは、順調に下がっています。
Cさんは最後にちょっとだけ上がっていますが、これは誤差の範囲。
最初から比べれば、確実に下がっています。
ダイエットで体脂肪を減らすことが、CRPの数値を下げることにつながった。
肥満以外にも、原因はあります。
<慢性炎症の原因>
肥満
過度の飲酒
ストレス
喫煙
高血糖
加齢など
年齢が高い人ほど炎症が強くなり、大きな病気になる可能性があるとのこと。
実は、番組冒頭に登場したスーパーおじいちゃんの阿南さんにも、CRP値を測定してもらいました。
その結果がこれ。
0.02mg/dl
基準値の 1/10以下です。
すごい~!
CRP値が基準範囲内(0.3以下)でも、高めの人は、生活習慣を見直してみてください。

慢性炎症という自覚症状のない小さな炎症が、身体の中で起こっている場合があります。
しかし、今は高感度CRPがあるので、それでチェックできる。
健康長寿の秘訣は、慢性炎症を抑えることでした!

ガッテン! ガッテン!
□ ポリアミンの効果

慢性炎症を食事の面から改善できないか?
そういう研究が始まっているそうです。
自治医科大学大学院 医学研究科の 早田邦康 教授。
早田先生は、マウスを使って、ある食材を実験しました。
それは、「豆」と「きのこ類」。
豆ときのこ類には、「ポリアミン」が たくさん含まれているんです。
こういった食材を食べていくと、炎症を抑えるように働くらしいのだ。

大豆やキノコに多く含まれるポリアミンに、慢性炎症を抑える可能性が!
マウスによる実験。
ポリアミンを与えたマウスは、毛並みも良くて、長生きです。
反対に、与えていないマウスは、毛並みも悪く、早く死んでしまったのだそう。
ポリアミンが人にも効果があるかどうかは、現在、研究中。
今後に期待です。


次回は、これ。
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