「かかと落とし」以外にも、血糖値を下げる方法があった。
しかも、将来の糖尿病まで、予防してくれる。
それは、新しいタイプの睡眠薬(新薬)を飲むこと。
熟睡している時に出る、デルタ波。
これを増やすことが大事。
交感神経を鎮め、ストレスホルモンを減少させることができる。
<常住富大くんの洞窟実験>
理想の睡眠時間は?
すぐに眠れるようにするコツ。
<筋弛緩法>
解説:大阪市立大学医学部附属病院 稲葉雅章 医師。
2017年2月22日放送の「ガッテン」より、「最新報告! 血糖値を下げるデルタパワーの謎」からのメモ書きです。

□ デルタパワーの新治療

先週に引き続き、「血糖値を下げる方法」がテーマです。
実は、毎日のアレと、密接なつながりがあったのだ。
誰もがする、しないではおれない、アレ。
アレを改善する薬で、血糖値まで下がっちゃう。
そのキーワードが、「デルタパワー」。
なんと、血糖値を下げるだけでなく、将来の糖尿病まで、予防してくれるんだって。
今週は、医学界大注目のデルタパワーに、迫ります。
デルタパワーを求めて向かったのは、栃木県 那須烏山市(なすからすやまし)。
山間にある、人工的に掘られた洞窟だ。
奥へ奥へと進んでいくと、家が?
実は、実験のために、ロッジを特別に建てたんですって。

ガッテンボーイズの常住富大くんには、ここで6日間、暮らしてもらう。
でも、これでどうして、糖尿病になりにくい身体になるんだ?
デルタパワーを使った治療をしているというのが、大阪市立大学医学部附属病院。
稲葉雅章 先生は、糖尿病治療 38年のベテランです。
先生は、デルタパワーに注目し、糖尿病のまったく新しい治療法を生み出したのだ。
それに使うのが、ある新薬。
この薬を、17人の患者さんに使ったところ、14人が改善したという。
中には、血糖値が「30」も下がった人もいた。
稲葉先生のお話。
「薬物っていうのも最近、進歩していて、こういうのを使うことで、血糖管理というのは非常に良くなる、ということになります」
この新しい治療法を、体験してもらうことになりました。
都内に住む72歳の男性、Aさん。
15年前から糖尿病を患っているという。
治療の一つとして毎日ウォーキングしていますが、血糖値は下がりません。
夕食は、お米の代わりに、糖分が少ないシリアルを食べる。
それでも、Aさんの血糖値は下がらないのだという。
こんなに努力しているのに、血糖値は年々上昇。
10年前は「120台」だった血糖値が、今は「140」を超えるようになってしまった。
(空腹時血糖値は、「110未満」が正常)
そこで今回、デルタパワーを使った治療法を試すことに。
大阪で、稲葉先生を受診します。
まずは、特別な検査から。
その後、検査結果をもとに、診察が行われました。
分かったのは、デルタパワーが非常に少ないこと。
デルタパワーは、医療現場でも使われている言葉で、もともと人間が持っているものなんです。
健康な人に比べ、Aさんのデルタパワーは、少なかったんですね。

診断の結果、Aさんには、デルタパワーを増やす新薬が処方されました。
東京に戻り、薬を飲み始めてから、1週間後。
Aさんの血糖値に変化が。
前は「140」を超えていたのが、「112」に改善したんです。
さらに、血糖値以外にも、うれしい変化がありました。
Aさんは言います。
「身体の動きが軽くなった」
デルタパワーを増やして血糖値を下げるという、新しい薬。
こんなものが、あったとは。
デルタパワーは、測定できるものなんですね。
Aさんの場合、「609」から「1168」に増えました。
その結果、血糖値は、「140台」だったのが「112」に改善。
でも、デルタパワーって、何なの?
スタジオに運ばれてきたのは、デルタパワーを測定する装置。
頭につけて、脳波を測るようです。
脳波といえば――
アルファ波:リラックス
ベータ波:集中
シータ波:瞑想
そして、デルタ波は、血糖値に関係するのだ。
新薬を飲むと、デルタパワー=デルタ波の量がアップするんですね。
その結果として、血糖値が下がる。
デルタパワーを増加させる薬は、2014年に登場しました。
そして、この薬、実は、糖尿病の薬というわけではないんです。
誰もが知っている、〇〇薬。
頭痛薬? 便秘薬? 風邪薬?
さすがに、水虫薬ではないでしょう。
実は、「睡眠薬」なんです。
でも、どうして、睡眠薬が効くんだろう?
□ 熟睡とデルタ波

この新薬を飲むと、寝ている間に、デルタ波を増やしてくれるらしい。
そこで、実験です。
本日二人目のガッテンボーイ、池田倫太朗くん。
夜の病院、要クリニックへ。
脳波計をつけて、デルタ波が出る瞬間を、捉える。
寝る前、リラックスした状態では、アルファ波が出ていました。
さて、入眠後は、どうなるか?
やがて、激しく上下する波、デルタ波が出てきましたよ。
この脳波が出ている時、脳は特別な状態に置かれているのだという。
それを確かめるべく、スタッフが動いた。
まずは、声をかけてみる。
でも、起きません。
お次は、太鼓だ。
が、これでも起きない。
なら、サイレンなら、どうだ。
何! これでも起きないだと。
ええい、最終手段だ!
早朝バズーカで、どうだ!
おおっ、やっと起きた!
って、何の実験なの?
デルタパワー(デルタ波)とは、熟睡している時だけ出る脳波なんです。
これが増えると、血糖値が下がる。
血糖値が高い人、3名のデルタパワーは、こうでした。
( )内は、同年代の平均。
Aさん 72歳:609(1450)
Bさん 48歳:2204(2519)
Cさん 45歳:681(2519)
やはり、平均より、少ないですね。
<血糖値と熟睡の関係>
血糖値が上がると、交感神経が「頑張るぞ」という状態になる。
そうすると、興奮しているので、熟睡できません。
熟睡できないと、脳はストレスを感じて、ストレスホルモンを出します。
その結果、血糖値が上がる。
血糖値が上がると交感神経が興奮状態になり――
この繰り返し、負のサイクルが始まっちゃうんです。
血糖値が上がる → 交感神経が興奮状態に → 熟睡できない → 脳がストレスホルモンを出す → 血糖値が上がる → (繰り返し)
□ 稲葉雅章先生の解説
ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
大阪市立大学附属病院の 稲葉雅章 先生です。
糖尿病になると交感神経が緊張する。
これは 1対1の関係になっていると、言われています。
さらに、交感神経が活発になることで、デルタパワーが下がるということを、稲葉先生たちが見つけて報告したそうな。
そこで登場するのが、新しい睡眠薬です。
これは、熟睡をすごく上げてくれる薬剤なんです。
熟睡が上がる → ストレスホルモンが少なくなる → 血糖値も下がる → 交感神経が落ち着く → 熟睡できる → (繰り返し)
悪性サイクルが、いい方向に回るようになるのだ。
睡眠薬で負のサイクルを断ち切って、血糖値改善へ。
ゲストの島崎和歌子さんから、こんな質問が出ました。
「睡眠薬を飲み続けると、日中まで眠くなりそうなイメージがあるんですけど…」
稲葉先生によると、そのあたりは解決できているそうです。
新しい薬は、非常に安全性が高くなっている。
睡眠にだけ、ピュアに効くそうです。
昔のは、「GABA受容体作動薬」。
脳の興奮全体を抑え、熟睡を取り戻すタイプ。
新しい薬は、「オレキシン受容体拮抗薬」(2014年発売)と「メラトニン受容体作動薬」(2010年発売)。
これらは、自然な睡眠を上げてくれる。
これまでの睡眠薬は、脳の活動全体を抑えて、眠りを誘うタイプでした。
一方、新しい睡眠薬は、脳が出す睡眠をコントロールするホルモンにだけ、作用するんです。
自然な深い眠りを、もたらしてくれる。
なので、副作用の心配も少なくなっているそうです。
(とはいっても、お医者さんの説明をよく聞き、指示に従って、服用してくださいね)
実は、睡眠障害があると、糖尿病の発症率が 2倍に。
なので、睡眠薬の使用で、糖尿病発症の予防にもなるというわけ。
糖尿病の人は、睡眠障害の自覚が、あまりないのだそう。
Aさんも、問題ないと思っていたのに、睡眠障害があった。
血糖値が高い人は、自分が熟睡できていないことに気づいてない場合が多いのだ!
気づくためのポイントは、「日中の眠気」。
昼間に感じた眠気を、1週間ほど、記録してみてください(睡眠日記をつける)。
1時間を超える昼寝をしてしまったり、仕事に差し支える強い眠気を頻繁に感じる場合は、熟睡が足りていない証拠です。
かかりつけの医師に、ぜひ相談を。
あるいは、睡眠外来を受診してください。
ちなみに、寝酒は、あまりよくありません。
寝つきはよくなっても、睡眠の質は下がってしまう。
ということは、デルタパワーも下がるんですね。
(飲酒は、適度な範囲で)

新たな睡眠薬で熟睡を増やせば、血糖値を下げることができる。

ガッテン! ガッテン!
□ 常住くんの洞窟実験と理想の睡眠時間

あれ?
何か忘れていると思ったけど、洞窟で暮らしている彼は、どうしてるの?
実は、常住くん、糖尿病を防ぐ もう一つ重大なことを、見つけてくれたんです。
実験を行ったのは、長さ100メートルの、洞窟の奥の奥。
そこに、特別な小屋を作った。
当然、音も光も、一切ありません。
つまり、理想的な睡眠が約束された空間。

午後11時から午前11時までの12時間は、完全消灯。
外出禁止で、寝られるだけ寝てもらいます。
その他は、自由時間。
普段、睡眠には満足しているという、常住くん。
平均睡眠時間は、7時間とのこと。
さあ、実験開始です。
夜の11時に、消灯。
もう、真っ暗けのけ。
何も見えず、音もなし。
午前11時に、起床だ。
この日の睡眠時間は、11時間19分。
次の日は、11時間2分。
たっぷりですね。
ちなみに、昼間は、こんなことしていた。
趣味のダンスの練習。
マンガ(「からくりサーカス」?)を読む。
時には、洞窟を出て散歩することも。
実験5日目。
本人の感想は、「睡眠ばっちりとれてるなって感じますね」。
そして迎えた、最終日。
血液検査をして、実験終了です。
「僕の28年間の人生の中で、一番寝たんじゃないかな」とのこと。
実験前は「7時間」だと言っていた、常住くんの睡眠時間。
1日目と2日目は、11時間ほど。
3日目と4日目は、10時間ほど。
5日目は、8時間半ほどでした。
「個人の最適睡眠時間と潜在的睡眠不足の推計」(国立 精神・神経医療研究センター)という論文があります。
普段、睡眠は十分とれていると感じている20代の若者 15人に、閉鎖空間で、9日間寝てもらったのだそう。
その結果、睡眠時間は、こうなりました。

実験前の平均睡眠時間は、7時間半ほど。
1日目は、10時間半。
それがだんだん下がっていって、最終的に、8時間半に落ち着きました。
国立 精神・神経医療研究センターの 三島和夫 先生のお話。
「(20代の)必要睡眠時間っていうのは、7時間半くらいっていうのが、世界中の研究で明らかにされていたはずだったんですが」
「それよりも1時間長い8時間半近く必要だったと分かりました」
この1時間が、ものすごく大きい。
睡眠時間とインスリン分泌能(HOMA-β)のグラフ。

7時間半だと「62.3」だったものが、8時間半だと「73.0」に増えている。
インスリン分泌能とは、すい臓がインスリンを生み出す能力のこと。
インスリンは血糖値を下げてくれるホルモンなので、この能力がアップするということは、将来、糖尿病になりにくくなるということなんです。
ちなみに、常住くんも、洞窟の睡眠で、インスリン分泌能が「80」から「89」にアップしてました。
<寝だめ>
「寝だめは、睡眠を貯めているのではなく、睡眠不足の負債を返済している」のだそう。
実験で、1日目の睡眠時間が多くなるのも、このため。
普段のツケを、返したからなのだ。
その後、落ち着いたところが、理想の睡眠時間なんですね。
寝だめが 3時間以上の場合、普段の睡眠が足りていない証拠です。
再び、三島和夫 先生のお話。
「すべての年代で、できるだけ短めの睡眠習慣をとるように、なってしまった」
「これ以上短くなると、眠気や疲労感が出てくるので、耐えられない」
「(実験の)20代の人も含めて、強い自覚症状が出る寸前のところで、必要睡眠時間より短いギリギリの落としどころで、生活しているということじゃないでしょうか」
さらに、こんなデータも。

日本人の睡眠時間は、1960年代から、ずっと減り続けているんです。
57年前には「8時間13分」だったものが、今では「7時間15分」に。
しかも、世界的に見ても、日本人の睡眠時間は、最低レベル。

健康のためには、寝ないといけないんですね。
□ すぐに眠れる筋弛緩法

なかなか睡眠時間はとれないけど、せめて、寝室に入ったら、あっという間に眠りたい。
そういう人には、これはどうでしょう。
「睡眠時間を確保するコツ」
教えてくれるのは、国立 精神・神経医療研究センターの 綾部直子さん。
自分で自分をゆるめて熟睡へ、という技です。
<筋弛緩法>
身体の緊張を解いてリラックスすることで、心の緊張をほぐし、寝つきをよくする。
(1) イスに、浅めに腰を掛けましょう。
両足は、ペタっとつくような形。
(2) 手を軽く握り、脇を締めて、二の腕に力を入れます。
そのまま肩甲骨を寄せて、肩を上げ、足を上げる。
(3) 全身に、6~7割の力を入れて、5秒間キープ。
5秒経ったら、ストーンと力を抜く。
(4) 20~30秒間、筋肉がじわじわする感じを、味わってください。
(5) 軽く目を閉じ、これを 2~3回行う。

コツは、リビングなど、寝室以外で行うこと。
身体がリラックスしてから寝室に入ると、す~っと眠れることが多いのだそうです。
普段、私たちが活動している時は、交感神経が優位になっています。
筋弛緩法で、交感神経より、副交感神経が優位になるんですね。
これにより、寝つきや睡眠の質がよくなる効果があるのだ。
筋弛緩法は、筋肉に力を入れるので、身体や腰に負担や痛みを感じる場合は、無理しないでくださいね。
□ 夜食の影響

最後にもう一つ、睡眠のコツを。
20代の健康な女性に、実験してもらいました。
夜12時、寝る直前に、夜食(うどん、おにぎり、オレンジジュース)を食べてもらう。
お腹が満たされると、安心して、ぐっすり眠れそう。
翌朝の感想も、「ぐっすり眠れました」だった。
でも、デルタパワーは、「3560」から「2348」に減ってたんです。
寝る直前の夜食は、熟睡できなくなり、将来の糖尿病の危険をアップさせるようです。
寝る前、3時間は食べないようにするのが、熟睡のポイント。
覚えておきましょうね。


次回は、これ。
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