まだまだ分からないことが多い、「鍼(はり)治療」。
ツボって、何なのだろうか?
意外な事実が、出てきました。
痛みの原因は、アレのシワだったのだ。
「 ガッテン 」 より、「 ~ 慢性痛 しびれが 改善!逆子も治る!? ~ 東洋の神秘 はり治療 SP 」 。
放送日 : 2019 年 2 月 20 日 。

□ ツボって何?

さあ、今回のテーマは何でしょうか?

ズバリ、「鍼治療」について。
街を歩いていると、看板を見つけたり。
新聞によく、広告チラシが入っていたり。
鍼の治療院(鍼灸院)、よく見かけませんか?
それもそのはず、2019年現在、コンビニの数より多いんだって。
でも、どうして効くのか、知ってますか?
いったい、どんなメカニズムがあるのだろうか?
今回は、その辺について、学んでいきたいと思います。
まずは、「ツボ」について。
辞書には、こう書かれてますねぇ。
【つぼ】 灸をすえ、また鍼を打って効果のある人体の定まった個所。穴。経穴。(大辞林より)
多くあるツボのうち、「361種類」が 世界共通のツボとして、認識されているのだそうな。
2006年には、WHO(WPRO)で、「経穴部位国際標準化公式会議」が開催された。
本場中国では、ペットにだって、鍼治療が施されるんだって。
そんな中国にあって、鍼治療の中心地とされているのが、「浙江省(せっこうしょう)衢州(くしゅう)市」です。
19世紀にまとめられた、「鍼灸大成(しんきゅうたいせい)」という貴重な本。
この本について、鍼の名手である 金瑛さんが、教えてくれました。
<鍼のルーツ>
昔々あるところに、男が住んでおりました。
この男がある日、石につまずいて、足をケガした。
するとどうでしょう、持病の頭痛が、不思議なことに、治ってしまったのです。
諸説ありますが、これが「ツボの始まり」だと言われている。
以来、中国では、様々な場所に鍼を打って、身体に起こる反応を、観察したそうな。
その積み重ねが、現在ある「ツボの体系」なんですね。
何回も何回も、気が遠くなるほど試して、経験則を積み上げ、治療法として確立してきたのだ。
金瑛先生は治療の際、「ツボができてますね」という表現をしました。
ん?
できるとは、どういうことなんでしょう?
先生は言いました。
「実は、ツボというものは、身体に不調があってはじめて、現れるものなんです」
例えば、胃の状態がよくない人には、「足三里」というツボが現れるのだそうな。
完全な健康体なら → ツボはない。
どこかよくない人に → ツボが現れる。
ってことは、「コリ」に近いんだろうか?
言い方を変えると、こういうことらしい。
健康な人は → ツボを刺激しても感じない。
どこかよくない人は → 特定のツボを刺激したら痛い。
例えば、ツボを順番に押して、調べる。
痛くなければ、それらのツボに関わる部位は、健康な状態。
痛いツボがあれば、そこに関わる部位に、問題があると。
ツボにピンポイントにあたる → きてると感じる。

きてる、効てる、効いている。
痛みだったり、何ともいえない感覚だったり。
それを感じると。
そういえば、手足のツボを押さえる時、個人差が出ますよね。
専門家はそれで、〇〇悪くありませんか? と聞いたりする。
□ 専門家の解説

日本の第一人者に、教えていただきましょう。
明治国際医療大学の 伊藤和憲 教授。
先生は、鍼灸師として治療しながら、その科学的メカニズムを研究しているお方なのだ。
鍼がツボにあたった時の感覚を、伊藤先生はこう言っています。
「筋肉が少し、収縮した感じになって、鍼が少し重たくなります」
こういう時、ツボにきたと判断するのだそう。
鍼がツボを的確にとらえた瞬間。
筋肉が「ピクッ」としてる。

ちゃんと反応があるんですね。
また、超音波エコーで見ると、こんなことが分かる。
慢性的な肩こりに悩む男性に、鍼を打ちました。
場所は、「肩井(けんせい)」。
エコー画像を見ると、鍼先あたりに、白い層が見えます。

実はこれ、鍼が「筋膜」を打ち抜いてるんです。
<ツボの正体>
ツボの正体については、様々な説がある。
未解明な部分も多い。
これから紹介するのは、そのうちの有力な 1つです。
筋肉は、1本1本の細い繊維が集まって、形成されています。
その繊維たちを まとめているのが、「筋膜」なんですね。
例えば、無理な姿勢を続けていると、どうなると思います?

血行が悪くなって、筋膜にシワができてしまう。
エコーに写っていた白い層は、この「筋膜のシワ」なんです。
しかも、筋膜には、痛みを感じる受容体が密集しています。
なので、痛みも出る。
[ ツボ=筋膜のシワがある場所 ]
このツボに、鍼を刺すと、どうなるか?
鍼を刺す → 小さな傷ができる → 血流がよくなる → 筋膜のシワが消える。

これによって、痛みが消えるのだ。
鍼のピンポイント力が、活きてくる。
小さい傷で、血流改善!
ん?
でも、ツボって、離れた場所に効くことも、多いですよね。
足のツボが、内臓に効くとか。
あれって、どういうこと?
<どうして、離れた場所にも効くの?>
逆子(さかご)を鍼で治した。
そんな話、聞いたことありません?
鍼を刺すのは、足です。
これでなぜか、赤ちゃんが動いて、逆子が治るというのだ。

(ただし、すべての逆子が治るというわけではありません)
メカニズムも、だんだんと分かってきました。
足の神経と、子宮や卵巣 周辺の神経は、脊髄でつながってるんです。

鍼で足のツボを刺激すると、神経を介して、子宮や卵巣にも影響を与えると。
足のツボを刺激 → 神経のネットワークを通じて → 子宮に伝わる。
(*諸説あり)
<脱線>
椎間板ヘルニアの人は、ある意味、理解しやすいかもしれません。
患部は、腰です。椎骨(ついこつ)と椎骨の間にある椎間板の中の髄核(ゼリーみたいなの)が飛び出して、神経にあたり、炎症を起こしている。
でも、痛みが出たり、痺れたりするのは、お尻だったり、ふくらはぎだったり、くるぶしだったり、足の指だったりする。
(足の親指に力が入らなくなることもある)
これも神経のつながりで、そうなるのだ。
人体は、「血管」や「神経」「リンパ」など、様々なネットワークで結ばれているんです。
ツボを刺激すると、こうしたネットワークを通じて、離れた部位にも作用すると考えらえている。
(完全に解明されたわけではありませんが)
筋膜もまた、ネットワークの 1つ。
ふくらはぎ → ふともも → 背中 → 首 → 頭部。
手 → 腕 → 肩甲骨や肩 → 首。
このように、筋膜もつながってるんです。
ツボのつながりである「経絡(けいらく)」は、「神経」や「リンパ」「筋膜」の線上にあります。

手に、「合谷(ごうこく)」というツボがあります。
頭痛や歯痛など、頭部の痛みに効果があるとされている。
合谷に鍼を打つと、顔の血流が変化します。
鍼で、顔の血流がアップする。

ツボや鍼のメカニズムについては、まだまだ分からないところがあります。
けれど、検査装置が発達してきているので、効果は確かめられるようになってきました。
・ 筋膜のシワ(層)の様子。
・ 血流の変化。
・ 胎児の位置。
メカニズムの詳細は よくわからないけど、効果がある。
その代表に、「麻酔」があります。
麻酔、手術などで欠かせませんよね。
これなしでやられたら、たいへんです。想像しただけで、痛い。
麻酔は、薬の量でコントロールします。
量を間違えると危険なわけですが、長い年月に蓄積された経験により、「この場合はこう」という量が決まっており、また患者をモニターしながら、専門家が調節する。
そう考えると、鍼も似てますよね。
未解明な部分も多いが、経験則により体系づけられている。
もともと、鍼による麻酔もあるわけだし。
脊柱管狭窄症の後遺症で起こる、「しびれ」。
このしびれを取るのに、鍼灸治療が使われることがあります。
また、すでに服用している薬が多く、副作用が心配で、痛み止め薬を使えない人もいる。
そのような場合にも、鍼治療が施されることがある。
お腹の赤ちゃんが心配で、薬が使えない場合も、そうですね。
大事なのは、「効果が感じられること」ではないでしょうか。
痺れや痛みが軽減する。
それならば、ちゃんと意味はあるのです。
救いになる。
(逆もまたしかり、ですが)
<鍼治療を受ける際のポイント>
鍼治療は、自費診療が一般的です。
治療院によって異なりますが、
時間は、1回、30分~1時間。
費用は、3千円~1万円ほど。
ただし、一部の疾患については、医師の同意があれば、保険適用されることもある。
例) 神経痛、リウマチ、腰痛、首の痛み(五十肩、肩こりなど)、首の痛み(むち打ちなど)。
また、これら以外の疾患でも、慢性的な痛みが主な症状で、医師が必要だと判断したものについては、保険適用されることがある。
まずは、かかりつけの医師に、相談しましょう。
鍼治療に対して同意書が発行されれば、鍼灸院で治療を受けた際に、保険を使うことができる。
注意) 治療の効果には、個人差があります。
□ 太古からのメッセージ?
アルプス山中の氷河で発見された、「アイスマン」と名付けられたミイラ。
紀元前3300~3100年頃の石器時代人だとされている。
アイスマンの身体には、あちこちに「入れ墨(タトゥー)」がありました。
問題は、その位置です。
なんと、現代の鍼灸治療を行う場所と、ほぼ重なっていたのだ。
いずれも、腰の痛みに効くとされる場所だった。

アイスマンたちも、ツボの効果を、経験的に知っていたのかもしれませんね。

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