今回のテーマは、医学界のシンデレラ 「筋膜」。
肩こりや腰のハリ、老け顔にまで関係。
ゆがみや引きつりを、ほぐそう。
<筋膜リリース法>
・背中。
・肩こり改善。
・顔の若返り。
・テーブルを使わない方法。
ドクネット:首都大学東京 健康福祉学部 理学療法学科 竹井仁 教授
2015年11月29日放送の「健康カプセル! ゲンキの時間」より、「~ 日頃の癖が肩こり・腰ハリに? ~ 医学界大注目の筋膜とは?」「腰痛の痛み改善! 筋膜ほぐし」からのメモ書きです。

□ 医学界のシンデレラ

「医学界のシンデレラ」に例えられているものがあります。
それは、「筋膜(きんまく)」。
誰からも注目されることがなかったのですが、医療技術の進歩でその存在が明るみになると、身体のあらゆる不調が治ると、一躍注目の的に。
肩・腰・首のコリは、すべて筋膜が影響しているのだという。
東京都は荒川区にある、首都大学東京。
健康福祉学部 理学療法学科 の 竹井仁 教授は、筋膜研究の第一人者なのだ。
筋膜の中で、筋肉を覆っているのが、「筋外膜(きんがいまく)」です。
筋外膜とは、筋肉の束がバラバラにならないように、筋肉を包み込んでいる膜のこと。鶏肉などにある透明の膜、あれが筋外膜。
筋外膜の上には、「深筋膜」があります。
この深筋膜は、全身を、ボディースーツのように覆っている。
そしてこれこそが、コリやハリに影響するのだという。
筋膜を構成するのは、伸縮性のある「エラスチン」と伸縮性のない「コラーゲン」。
健康な状態では、これらがスムーズに動きます。
けれど、エラスチンとコラーゲンが何らかの原因でねじれ、筋膜自体の伸縮性がなくなると、コリが生じる。
「コリの原因は、筋膜のねじれだった」
竹井先生によれば、人間の身体の中で筋膜だけを残して、他を溶かし切っても、形だけはしっかりと残るのだとか。
ゆえに、「第二の骨格」とも呼ばれている。
実際にコリに悩んでいる3名を、竹井先生に診ていただきます。
[ケース(1)]
肩こりに悩んでいる、48歳男性。
先生が注目したのは、腕でした。
ベース演奏で酷使した右腕の筋膜により、右肩の筋膜が引きつり、肩こりが発生しているようです。
[ケース(2)]
右腰にハリのある、42歳男性。
左右の腰を見比べると、右腰の血流が明らかに悪いことが分かりました。
これは、長年の野球の影響。フォームが、普段の姿勢にまで、影響を与えていたらしい。
右肩が下がり、右の骨盤が上がることで、右腰に負担がかかっていました。
日常の癖でも、左右の筋膜バランスを崩す可能性が。
・カバンを持つ手。(いつも片側で持つ)
・重心をかける足。(いつも片側に重心をかける)
・携帯電話での話し方。(いつも姿勢が同じ)
決まった方ばかり使っていると、バランスが崩れてしまいます。
そうならないために、意識的に、左右交互を心がけましょう。
・荷物は、片側だけで持たない。
・足の組み方や、重心を、固定しない。
・途中で、左右を入れ替えること。
[ケース(3)]
背中のコリに悩む、39歳女性。
背中から腰全体に、ハリやコリがあるとのこと。
まさか、これに、老け顔まで関係してくるとは。
痛みを気にしすぎて、姿勢が前に傾き、表情にまで悪影響を及ぼしているようです。
身体の上に顔がまっすぐ のっていれば、前にも後ろにもバランスが取れているので、顔(表情)が自由に動きます。
けれど、前に傾いてしまうと、顔の筋膜が上下に引っ張られ、どちらにも動けない状態になってしまう。
これでは、表情が乏しくなってしまいます。
普通なら、目を大きく開けると、額にしわがよりますよね。
でも、この女性の場合、ほとんどしわができませんでした。
しわがないから いいというわけではなくて、表情が乏しくなってしまうのです。
全身でつながっている筋膜。
長年の癖や暮らしにより、一部が引きつると、いろんな悪影響が生じるようですね。
□ ドクネット
首都大学東京の 竹井仁 先生に、教えていただきます。
荷物を持つ側が決まっていると、やはり、バランスが崩れるみたいです。
さらに、男女で、傾向に差が。
男性の場合、力が入るので、荷物を持つ方の肩が上がりやすい。
女性の場合、力が弱いため、荷物を持つ方の肩が下がりやすい。
髪の分け方でも、影響が出るのだとか。
例えば、髪を左に分けると、右側に意識が行きやすくなります。
すると、左肩が下がるという癖につながるそうです。
他にも、暮らしの中では、このような癖が。
・頬杖をつく。
・横になってテレビを見る。(あるいは、首の向き)
・つり革をつかむ手。
これらで、決まった片側だけを使ってしまいがちです。
同じ側ばかり使っていると、筋膜の引きつりが起こり、コリやハリが生じているかも。
鏡などを見て、自分の身体の傾きなどを、チェックしてみましょう。
□ 筋膜改善法

では、筋膜を改善するには、どうしたらいいのでしょう?
つながっている筋膜だけに、つながりの広い範囲で、筋膜をほぐしていくことが大事になってくるようです。
筋肉のように 1つのストレッチということではなく、つながっているボディースーツを、連続的にほぐす。
それを実現するのが、「筋膜リリース」という方法。
<背中編>
(1) テーブルの前に立ち、足を肩幅に開いて、両手をテーブルの上にのせます。
(2) そのまま、両手をゆっくりと前に、すべらせる。
この時、ヒザは伸ばして、身体を90度にするのが、ポイントです。
(3) この状態で、30秒キープ。1日3回が目安。
慣れてきたら、時間を増やすと、効果的です。

<肩こり改善>
(1) 左足を前に出し、右手をテーブルに置きます。
(2) 次に、左腕を天井に向かって伸ばし、15秒キープ。
後ろ足のヒザは、曲げないで、しっかりと伸ばしましょう。
(3) 続いて、上げた腕の方向に、顔と体をひねる。
気持ちよく感じるところで、15秒キープしてください。
この時、指先を見るようにすると、首周りまで、しっかり効果的に伸ばすことができます。
(4) さらに、そのままの姿勢で、右ひじをテーブルにつけ、15秒。
置いているヒジは、肩の内側に入るくらいまで、ひねってくださいね。
(5) 左右1セットで、1日 3セットが目安。
慣れてきたら、秒数を増やしてください。

<顔の若返り>
(1) イスに座って、両手を前に伸ばし、肩の高さまで上げる。
肩甲骨を前に押し出すイメージで、10秒キープ。
(2) 次に、肩甲骨を後ろに引き付けるように、ヒジを「L字」にし、10秒キープ。
ヒジは肩の高さを保つこと。
(3) その状態から両手を上げて、ここでも、10秒キープ。
ヒジの角度は、90度を保つこと。
(4) この姿勢のままで、目と口を大きく開け、5秒キープする。
(5) 続いて、腕を前に倒し、目と口を中心に集めるようにして、5秒キープ。
顔の体操は、3セット繰り返す。

たった数十秒で、驚きの効果が。
腰にハリがあった男性は、右腰の血流量が、目に見えて改善していました。
背中全体に痛みがあった女性は、立位体前屈が、「 1センチ → 14センチ 」と改善。楽になりました。
肩こりに悩む男性も、筋力計で肩の力を測定したところ、「 11.1kg → 18.6kg 」に。固まっていた部分が、ほぐれたようです。
目を大きく開けなかった女性も、しっかりと目を開けるようになりました。
<テーブルを使わない方法>
(1) 右手を頭の後ろ、左手を背中に回し、ヒジを90度に曲げて、両手を反時計回りにまわして、30秒キープ。
(2) 右足を左足の前に交差し、身体を左に倒して、30秒キープ。
(3) 逆も同じようにして、左右 3セット行う。

1日の中で、少しずつリセットしていくことが大事。
なので、朝1セット、昼1セット、夜寝る前に1セットと、やっていくとよいそうです。


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