今週のテーマは、「下痢」。
<新犯人は、パン?>
ピーター・ギブソン博士、避けた方がいい食材リスト。
糖で、大腸が水びたしに?
小腸のハサミ、分解酵素の働き。
<胆汁の影響>
朝ごはん → 通勤中にピー腹。
下痢止めが効かない。
朗報、コントロール可能だ。
東邦大学 医療センター 大森病院 瓜田純久 教授の解説。
2015年11月18日放送の「ためしてガッテン」より、「ユルいおなかの新犯人! 下痢ピンチ解決SP」からのメモ書きです。

□ 犯人はパン?

今週のテーマは、突然見舞われる悲劇 「下痢」です。
ゲリピ~ ゲリピ~♪
ゲリピ~ ゲリピ~♪
もうダメかと思った ゲリピ~♪
(「Let It Be」のリズムで)
みなさんからは、こんな体験談も。
【体験談(1)】
彼との初めての旅行。
夢のような時間だったのに。
突然の下痢で、大ピンチ。
バレたら、恥ずかしすぎます。
神頼みするしか、ありませんでした。
【体験談(2)】
第一志望の大学受験、当日。
試験中に、突然の下痢が。
答えじゃなく、他のものが出そうになってしまった。
【体験談(3)】
家族そろってのお出かけ中、あいにくの渋滞に。
お腹がピーとなったけど、降りる場所もありません。
そして、ついに、ついに…。
ガッテンでは、このような状態を、こう名付けました。
「ピー腹」
<ピー腹 思い当たるもの>
・油っこいもの
・冷たいもの
・便秘薬の飲み過ぎ
・牛乳
・ストレス
・食べ合わせ
・食あたり
・食べ過ぎ
・二日酔い
・風邪
・消化不良
・からいもの
ゲストの つるの剛士さんは、「2日連続のラーメン」だそうです。
今回、ピー腹の原因、犯人が見つかったそうです。
それも、2つ。
何と、その1つは「パン」だった。
でも、本当だろうか?
パンなんて、誰でも食べてるのに。
もともとお腹が弱めの人の話になりますが、普段食べているパンが、下痢を引き起こす原因に。
それを発表したのは、オーストラリアの医師、モナシュ大学のピーター・ギブソン教授。
パンが下痢を引き起こす原因について、ギブソン教授は、こうおっしゃった。
「ある物質が腸の中で、下剤と同じ働きをしてしまうんだ」
しかも、パンだけじゃないんです。
<ギブソン博士が発表した ピー腹を悪化させる食材>
・ネギ
・タマネギ
・ブロッコリー
・ニンニク
・パスタ
・パン
・大豆
・マッシュルーム
・マンゴー
・ナシ
・はちみつ
・ブドウ
・アスパラ
・洋ナシ
・リンゴ
・チーズ
・牛乳
・ヨーグルト
ギブソン博士の検証実験は、このようなものです。
慢性の下痢に悩む人、10名を対象に、2週間以上、特定の食材を避けてもらいました。
すると、10人中、8人が、下痢の症状が大きく改善したのです。
中には、症状自体が8割減った人まで。
□ 牛乳での実験

牛乳を使った、大実験。
牛乳に弱いディレクターさんに、牛乳を1リットル飲んでもらいます。
わざと ピー腹になってもらおうってわけだ。
協力してくださるのは、東邦大学 医療センター 大森病院の 瓜田純久 教授です。
牛乳を飲んで40分後は、変化なし。
変化は、2時間後に出ました。
腸の画像が、全体的に白くなっています。
特に大腸が、スカスカから、パンパンに。

瓜田先生は、こう教えてくれました。
「腸の中が、言ってみれば、水びたしの状態になります」
腸の中に、水分がたくさん出ているようですね。
飲んだ牛乳の量よりも、腸がビシャビシャに?
さて、先ほどあげた、「ギブソン博士が発表した ピー腹を悪化させる食材」。
共通するのは、「糖」でした。
ギブソン博士は、こうおっしゃいましたよ。
「ある種の糖は、大腸を水びたしにしてしまうんです」
病院で処方される医薬品の一つに、「糖類下剤」がある。
糖は、医療用の下剤として使われているんですね。
<メカニズム>
大腸くんの仕事は、食べ物から水分を吸収して、かたい便を作ること。
でも、大腸くんが逆に、水を出してしまうケースが。
これが、ピー腹状態なんです。
小腸さんは、食べたものを分解して、体内に吸収する役割。
その時の仕事道具が、分解酵素になります。
いわば、ハサミのようなもの。
牛乳を飲むと、「乳糖」が小腸に。
乳糖とは、牛乳などに含まれる糖の一種。
これを分解酵素が切ってくれるので、乳糖は吸収されます。
これは、ピー腹にならないパターン。
牛乳でピー腹になる人の場合、分解酵素が乳糖を切ってくれないんです。
そうすると、乳糖は分解されずに、大腸の方に入っていってしまう。
ビックリした大腸は、その時、薄めるために、水を出しちゃうのでした。
こうして、大腸は水びたしになり、ピー腹状態に。
小腸の分解酵素ですが、劣化してしまうようです。
乳糖の場合、ほとんどの人の切れ味が落ちる。
ただ、切れ味の落ち方には、個人差があります。
なので、牛乳を少々飲んでも何ともない人もいるし、1杯飲んだだけでピー腹になる人も。
では、パンの場合はどうでしょう。
パンを食べると、「フルクタン」という糖でできた物質の仲間が、小腸に入ってくる。
実は、小麦のフルクタンを分解するハサミ(分解酵素)を、人間の腸は持っていないのです。
つまり、そもそも分解できない糖が、小麦には含まれているってわけ。
分解されないフルクタンは、そのまま大腸へ。
すると大腸は、薄めようとして、水を出しちゃうんですね。
結論は、こうなります。
「様々な糖の仲間の中に、小腸が分解しにくい種類がある」
それが、「乳糖」「フルクタンの仲間」「果糖(果糖や糖同士がくっついた甘い物質、人工甘味料など)」。
もちろん、それらを食べても、平気な人はいます。
大腸が水びたしになるかどうかには、個人差がある。
過敏に反応する人が、ピー腹になるんですね。
□ 瓜田純久 先生の解説
ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
東邦大学医療センター 大森病院の、瓜田純久 先生です。
上であげた「ピー腹を悪化させるかもしれない食材」。
これらは食べない方がいいのかというと、決して、そうではありません。
パンや牛乳などの食材は、大事な栄養素。
お腹に問題のない人は、食べた方がいい。
<食材を控えた方がいい人>
・月に3回以上、下痢で困っている。
・過敏性腸症候群の診断を受けている。
小腸のハサミ、分解酵素の性能は、個人差が大きいのだという。
また、日本人は、乳糖の分解酵素が少ないそうです。
だいたい学校に入る頃(6歳ごろ)までに、9割以上の方が、ハサミの切れ味が落ちてしまうのだとか。
離乳してからもミルクを飲む生物は、地球上で、人間だけ。
そういう意味では、牛乳というのは特殊な食材なのです。
「お腹が弱めの人は、自分に合わない食材を見極めるのが大切」
<糖による下痢かも…>
[見分け方]
・前日、多く食べたものを疑う
[対策]
・すきっ腹で食べない。
・バランスよく食べる。
苦手な食べ物の見分け方ですが、前日、多く食べたものを疑う。
特に、食事の最初に食べたものをチェック!
すきっ腹で食べたものは、一番最初に大腸に到達します。
「あっ、この食材はヤバいかも」と思ったら、すきっ腹では食べないこと。
<苦手な食材が分かったら>
1回の食事で、食べる量を減らしてみる。
消化のいい食物を、あとに食べる。
1つのものをたくさん食べるのは、控えること。
バランスよく食べてください。
<下痢を起こしやすい糖の特徴>
消化吸収に時間がかかる糖。
大腸が水を出して薄めたくなってしまう。
ご飯の糖は、消化吸収しやすい糖。
なので、基本的に、影響は少ないようです。
大豆は、ゆっくり吸収される糖の代表。
しかし、豆腐などの大豆加工品の糖は、吸収しやすいようです。
大豆を加工する過程で、糖が分解されるから。

吸収されにくい糖が、下痢を悪化させる原因になるんですね。

ガッテン! ガッテン!
□ 胆汁も犯人?

さて、ここからは、ピー腹のもう1つの新犯人です。
これが判明すると、克服する方法も分かってくる。
【体験談(4)】
ある男性、Aさん。
40代の頃から、毎日のように、下痢に襲われてきたのだという。
特に苦しめられたのは、通勤中のピー腹。
長距離通勤なので、非常に困りました。
ピー腹は、時と場所を選ばず襲ってきます。
何度も診察を受けましたが、医師の答えはいつも同じ。
「ストレスですかねえ」
ところが、Aさんは、ストレスが原因だとは思えませんでした。
仕事も楽しんでやるタイプだったのです。
それに、土日もピー腹になっていた。
何か原因があるはずだと思った、Aさん。
それを調べてみようと思い立ち、記録をつけることにしました。
すると、奇妙な発見が…。
それにより分かったのは、原因が「朝ごはん」にあることでした。
そして、医師に言われた対策をしたところ、ピー腹がストップしちゃったんです。
Aさんは、こう振り返ります。
「非常に効きましたね」
「自分で予防できるし、自分で制御できる」
「生活、変わりましたね」
「うれしいです」
Aさんは毎日、朝食べたものを記録。
ピー腹になった時間も、記録しました。
それによって分かったのは、ストレスが原因ではないらしいこと。
仕事のない土日にも、ピー腹は規則正しくきます。
注目したのは、食事をしたタイミング。
食事をした1時間後に、ピー腹が起こっていた。
なぜ、1時間後に、必ず下痢になるのか?
カギは、胆汁(たんじゅう)にありました。
肝臓の下にある小さな袋、それが「胆のう」。
胆のうに、たまっているのが、「胆汁」になります。
胆のうは小腸とつながっていて、胆汁は「十二指腸乳糖(じゅうにしちょうにゅうとう)」と呼ばれる部分から、にじみ出る。
胆汁は消化液の一種で、本来は、とても大切な味方。
ところが、この胆汁が、悪さをしてしまうケースも。
国立病院機構 久里浜医療センターの 水上健 先生に教えていただきます。
「胆汁っていうのは、下剤としての作用があるんです」
「大腸に働いて、水分が出たりとか、大腸の働きを活発にさせる作用があるものですから、ごはんを食べたあとに胆汁が出ると、強力な下剤を飲んでいるのと同じような状態になってしまう」
<メカニズム>
TJこと胆汁くんが戦う相手は、食べ物の中でも最も手ごわい、「脂(あぶら)」。
脂肪は、胃の強力な力をもってしても分解できず、そのまま小腸にやって来るんですね。
この脂肪を、胆汁くんが、分解してくれるんです。
おかげで、小腸で吸収できるってわけ。
通常、胆汁は、胆のうに戻ります。
そして、何度でも出動してくれる。
胆汁の成分は、何度も再利用されるんですね。
Aさんの場合も、胆汁はちゃんと仕事をします。
脂肪を分解してくれる。
けれど、その先が問題に。
本来、胆のうに戻るはずの胆汁が吸収されず、大腸の方に行っちゃうんです。
こうなると、大腸がビックリして水を出し、水びたしに。
ピー腹状態になっちゃうのでした。
(ちなみに、胆汁自体は、肝臓でまた新しく作られるので、胆汁不足にはなりません)
Aさんの場合、胆汁が大腸に流れ込んで ピー腹を引き起こすまでが 1時間だったんですね。
□ 見分け方と対策
ここで再び、瓜田純久 先生が、スタジオに登場。
どうして、胆汁が戻れなくなるのでしょうか?
胆汁くんの帰り道は、小腸の末端にあります。
そこの機能が悪くなってしまうと、戻れなくなるようですね。
感染症や食あたりを何度も経験した人は、小腸の機能が低下している場合があるそうです。
胆汁の帰り道が傷ついているので、ピー腹を繰り返してしまいます。
【体験談(5)】
昔、盲腸の手術を受けた女性、Bさん。
盲腸の病気の影響で、小腸の胆汁を吸収する部分を、切除したそうです。
すると、食後にピー腹が生じるようになってしまいました。
瓜田先生によると、胆のうを手術で摘出した人も、胆汁が垂れ流し状態になって、下痢になるケースがあるそうです。
どうして、朝ごはんの後、ピー腹になるのでしょう?
胆汁は、夜 寝ている間に、胆のうにたくさん たまります。
それが朝ごはんを食べると、出てくる。
つまり、夜の間にたまった胆汁が、朝ごはんをきっかけに、大量に出てしまう。
こういう人は、アメリカでの報告では、非常に多いそう。
胆汁による下痢の特徴は、「どんな下痢止めも効かない」こと。
様々な下痢止めを試しても効果がない場合は、胆汁による下痢を疑ってください。
<胆汁による下痢の見分け方>
・その日の最初の食後になる。
・痛みはない。
・出せば、おさまる。
朝ごはんの後が多いようです。
グルグルする感じはあるが、あまり痛みはない。
そして、1回か2回、出したら、症状は治まる。
逆に、出しても腹痛が残る場合は、他の原因かもしれません。
朝ごはんを食べて直後の便意は、別らしいですね。
「胃直腸反射」という通常の反応。
気にする必要はありません。
胆汁による下痢の場合は、食後1~2時間後に下痢になることが多い。
なので、胆汁による下痢は、自分でコントロールできる可能性が高いという特徴が。
<胆汁コントロール>
食事のタイミングを早めて、トイレを済ませてから外出する。
また、朝の食事量を減らすと、胆汁が減り、大腸への刺激が少なくなります。

原因不明のピー腹を起こす原因は、糖と胆汁でした。

ガッテン! ガッテン!
□ 今週の色紙
「PTT」
(P)ピー腹の原因は、(T)糖と、(T)胆汁。
![NHKためしてガッテン 2015年 11 月号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/619t2f4VueL._SX270_.jpg)

□

移動中のピー腹って、つらいもんな~。

原因が分かれば、対策もできそうですね。
毎朝、食後1~2時間後になり、痛みが無くて、出せば治まるなら、胆汁が原因かも。

食べたものを記録して、苦手な食材を探し当てるのも、いいかもしれません。

意外にデリケートな大腸。
大事にした方がよさそうです。
次回は、うまみ 1.8倍、糖分 5倍、新名物誕生。
「酒かすパワー大全開!」。


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